Monthly Report of the Jupiter-Saturn Section, November 2024
課長 堀川 邦昭 K.Horikawa
木星はおうし座を逆行中で、夜半過ぎの天頂近くで輝いている。 衝が間近となっているが、今秋は例年に比べて天候が悪かったようだ。 今月は下表の観測者から報告が寄せられている。
| 阿久津富夫 | (フィリピン) | 45cm反赤/35cmSC赤 | 画像112 |
| 浅田 秀人 | (京都府) | 31cm反赤 | 画像21 |
| 安達 誠 | (滋賀県) | 36cm反赤 | スケッチ2枚 |
| 石橋 力 | (神奈川県) | 31cm反赤 | 画像22 |
| 伊藤 了史 | (愛知県) | 30cm反赤 | 画像15 |
| 尾崎 公一 | (愛知県) | 44cm反赤 | 画像95 |
| 菅野 清一 | (山形県) | 30cm反赤 | 画像13 |
| 熊森 照明 | (大阪府) | 35cmSC赤 | 画像14 |
| 鈴木 邦彦 | (神奈川県) | 19cm反赤 | 画像34 |
| 堀内 直 | (京都府) | 40cm反赤 | 画像6 |
| 堀川 邦昭 | (神奈川県) | 30cm反赤 | スケッチ48枚 |
| 宮崎 勲 | (沖縄県) | 40cm反赤 | 画像230 |
| 山崎 明宏 | (東京都) | 40cm反赤 | 画像3 |
| Abel, Paul | (英国) | 31cm反赤 | スケッチ1枚 |
| Fattinnanzi, Cristian | (イタリア) | 36cm反赤 | 画像4 |
| Go, Christopher | (フィリピン) | 35cmSC赤 | 画像32 |
| Grafton, Ed | (米国) | 35cmSC赤 | 画像3 |
| Olivetti, Tiziano | (タイ) | 41cm反赤 | 画像10 |
11日、体系II=328°のSEB中に小白斑が出現した。 翌日にはメタンバンドでも明るいことが確認され、濃化したSEB内部の攪乱現象であるmid-SEB outbreakが発生したことが明らかになった。 2016年12月末以来、8年ぶりの発生である。 国内では発生当日の鈴木邦彦氏の画像最も早かった。
発生した場所には以前から拡散した明部があった。 昨シーズンにRS前方で見られた小白斑と同一で、ふらふらと動きながらこの位置まで前進してきた。 このようなSEB内部にある動きの遅い明部や暗いバージは、攪乱活動の発生源となるケースがしばしばあり、前回のmid-SEB outbreakや2010年のSEB攪乱がそうであった。 今回のoutbreakの発生場所が、明部の前端付近であったことは注目に値する。
白斑は数日のうちに前方へ拡散したが、発生源から次の白斑が供給され、これまでに7日ぐらいの間隔で4つの白斑が形成された。 発生から二週間を過ぎるまでは、活動的な白斑はひとつだけで、穏やかな印象であったが、月末になって第3、第4の白斑が顕著に明るくなり、ようやくoutbreakらしい様相になってきた。 前回のoutbreakも最初は穏やかだったが、その後活発になり、半年以上に渡って木星面の約半周に広がる最大級の活動に発展したので、今後の活動に注目したい。
South Equatorial Disturbance(SED)は、EZsのほぼ全周に広がっている。 後端部にある「本陣」と呼ばれるSEBnのリフトは、+1.2°/dayで後退を続けて、25日は体系I=66.4°(鈴木氏)にあり、EZsの大きな明部とfestoonが目立ち、後方のSEB北部に長い明帯を引きずっている。 月半ばにはリフトが口を開けて、明部が明るさを増し、festoonも明瞭になったが一時的であった。 12月には本陣が再び大赤斑の北側を通過するので、何らかの活動を期待したい。
RSは体系II=63.8°(21日、伊藤氏)にあり、今月はほぼ停滞していた。 内部は一様なオレンジ色で、濃度はSEBに劣るが、周囲の暗色模様がほぼ消失したためよく目立つ。 10月から活発になった後方の白雲領域(post-GRS disturbace)は、30～40°の長さに広がったが、月末には大きな白斑がなくなり、少し静かになった印象を受ける。
NEBでは相変わらずリフト活動が盛んである。 11月初めには体系II=340°付近で新たな活動が始まり、月末までに20～30°の明帯に発達した。 他のリフトと同様、-2°/day前後のドリフトで前進しており、11日頃にはちょうどmid-SEB outbreakと南北対称な位置にあったため目を引いた。
その北側では10月後半から体系II=200°台で、NNTBsジェットストリームの暗斑群が活発になっている。 NNTBは大部分の経度で淡いが、体系II=180°付近に赤茶色で長さ20°のバージがあり、目立つ模様の少ない領域で目立つ存在となっている。
土星は16日にみずがめ座で留となり、順行に戻った。 観測時間帯は夕方から22時頃までとなったが、高度が低く気流の影響を受けやすいため、観測条件は厳しくなりつつある。 今月は下表の観測者から報告が寄せられてた。
| 阿久津富夫 | (フィリピン) | 45cm反赤 | 画像2 |
| 石橋 力 | (神奈川県) | 31cm反赤 | 画像2 |
| 伊藤 了史 | (愛知県) | 30cm反赤 | 画像3 |
| 尾崎 公一 | (愛知県) | 44cm反赤 | 画像29 |
| 熊森 照明 | (大阪府) | 35cmSC赤 | 画像2 |
| Fattinnanzi, Cristian | (イタリア) | 36cm反赤 | 画像1 |
| Go, Christopher | (フィリピン) | 35cmSC赤 | 画像6 |
| Olivetti, Tiziano | (タイ) | 50cm反赤 | 画像5 |
環の傾きは、11月半ばに5.2°と、今シーズンの極大となった。 本体の5分の1ほどに開いた環では、カシニの空隙が東西で大きく弧を描き、内側にはC環もはっきりと認めることができる。 ただし、環の太陽に対する傾きは2.5°と減少する一方で、本体に比べて環はかなり暗い。 今後は来年3月の環の消失に向かって、急速に傾きが減少していく。
月初めの環は、スポークを思わせる東西で非対称な陰影が見られたが、その後は観測条件の悪化により、よくわからなくなっている。 土星本体は穏やかな状況にあり、特筆すべき模様は認められない。
(12月5日 堀川)
 |
| 図1 mid-SEB outbreakの発生 |
|---|
| mid-SEB outbreakの発生から発達する様子、右画像は最新の状況。これまでに4個の白斑が形成された(①～④)。 |
 前月へ |
 次月へ |