Monthly Report of the Jupiter-Saturn Section, October 2024
課長 堀川 邦昭 K.Horikawa
木星は19日におうし座で留となり逆行に転じた。 赤緯は今シーズン最大となり、南中高度は77°と天頂近くに達する。 気流の悪い日も多くなってきたが、高高度でかなり相殺されているようだ。 今月は下表の観測者から報告が寄せられている。
| 阿久津富夫 | (フィリピン) | 45cm反赤 | 画像45 |
| 浅田 秀人 | (京都府) | 31cm反赤 | 画像23、展開図1 |
| 石橋 力 | (神奈川県) | 31cm反赤 | 画像26 |
| 伊藤 了史 | (愛知県) | 30cm反赤 | 画像20 |
| 永長 英夫 | (兵庫県) | 35cmSC赤 | 画像16、展開図4 |
| 大杉 忠夫 | (石川県) | 30cm反赤 | 画像4 |
| 尾崎 公一 | (愛知県) | 44cm反赤 | 画像62 |
| 菅野 清一 | (山形県) | 30cm反赤 | 画像18 |
| 熊森 照明 | (大阪府) | 35cmSC赤 | 画像8 |
| 鈴木 邦彦 | (神奈川県) | 19cm反赤 | 画像23 |
| 鈴木 隆 | (東京都) | 18cm反赤 | 画像1 |
| 堀川 邦昭 | (神奈川県) | 30cm反赤 | スケッチ38枚 |
| 宮崎 勲 | (沖縄県) | 40cm反赤 | 画像444 |
| 山崎 明宏 | (東京都) | 40cm/30cm反赤/19cm屈赤 | 画像3 |
| 米山 誠一 | (神奈川県) | 25cm反赤 | 画像4 |
| Dauvergne, Jean-Luc | (フランス) | 30cm反赤 | 画像2 |
| Fattinnanzi, Cristian | (イタリア) | 36cm反赤 | 画像1 |
| Foster, Clyde | (ナミビア) | 35cmSC赤 | 画像2 |
| Go, Christopher | (フィリピン) | 35cmSC赤 | 画像11 |
| Grafton, Ed | (米国) | 35cmSC赤 | 画像8 |
| Olivetti, Tiziano | (タイ) | 50cm反赤 | 画像14 |
South Equatorial Disturbance(SED)の後端部が、10日頃にRSの北を通過した。 体系Iに対して+1.2°/dayで後退を続けているSEDの「本陣」、SEBnのリフトは体系I=40°近くに達した。 RS通過後もほとんど開口していないが、EZsの白斑が明るく目立つので、わずかながらSEBから白雲の流入があるのかもしれない。 本陣前方は広大な白雲領域で、体系I=300°付近にある明瞭なfestoonで区切られているが、このfestoonのドリフトは+0.6°/day程度で、本陣の半分しかなく、さらに前方の模様は体系Iに対して負のドリフトを示している。 SEDの領域は経度方向に拡大を続けて、現在はEZsのほとんどの領域を占めているようだ。
NEBでは、9月初めにWSCとWSEの合体が見られた(以下、合体後の白斑はWSEと呼ぶ)。 今月はそのWSEに、さらに別の白斑(A)が合体する現象が観測された。 白斑Aは9月上旬に、WSE前方にあったNEBのリフト領域後端付近で形成された。 10月半ばから急速に接近し、WSEに南側から時計回りに巻き付きながら、月末までには合体が完了したようだ。 圧巻は24日のOlivetti氏の画像で、WSEに絡みつく白斑Aから伸びる白雲が、蚊取り線香のような渦巻きを形成している。 NEBnには現在8個の白斑があり、ベルト中央寄りにはバージの卵のような暗斑も5個形成されている。 NEBは拡幅が完了し、次のステージに向かっているようだ。
9月末から10月前半にかけて、SEBsを後退する3個の大型リングが次々に大赤斑と会合した。 これにより、大赤斑前後のSTrBやスロープが再び明瞭になった。 また、体系II=62.1°(31日、宮崎氏)にあるRSでは、軽微なフレークが発生したことが、宮崎氏によって指摘されている。
RSの南側では、STBのspot #8という青いフィラメント模様が通過中である。 同様の模様は20°前方にもあり、両者の間に低気圧的な閉区間が形成される兆候が見られるので、今後の変化に注目したい。
RS後方のSEBでは、新たな活動がpost-GRS disturbanceで始まり、月末には長さ25°の乱れた白雲領域が形成されている。
永続白斑BAは体系II=198.7°(30日、鈴木氏)にある。 内部に薄茶色のリングを持つため、周囲とのコントラストは低い。 BA前方のSTBは暗斑の集合体のようで、やや乱れている。 ジェットストリーム暗斑群の供給源となっていて、約50°前方のRSに向かって大量の暗斑が押し寄せている。 RS周囲は暗斑群や前述の暗色模様が折り重なって、かなり複雑な様相となっている。
北緯60°のSPR内部では、S4-LRS1と呼ばれる長命な赤色斑点が別の白斑(B)と15日頃に会合した。 合体したらしいが、後の画像では前方に不明瞭な小明部が見られるので、白斑Bが南側を素通りしたか、または部分的な合体に止まった可能性もある。
土星はみずがめ座を逆行中で、観測時間帯は夜半前へと移った。 今月は下表の観測者から報告が寄せられている。
| 阿久津富夫 | (フィリピン) | 45cm反赤 | 画像1 |
| 浅田 秀人 | (京都府) | 31cm反赤 | 画像1 |
| 石橋 力 | (神奈川県) | 31cm反赤 | 画像2 |
| 伊藤 了史 | (愛知県) | 30cm反赤 | 画像6 |
| 大杉 忠夫 | (石川県) | 30cm反赤 | 画像1 |
| 尾崎 公一 | (愛知県) | 44cm反赤 | 画像7 |
| 熊森 照明 | (大阪府) | 35cmSC赤 | 画像5、動画1 |
| Abel, Paul | (英国) | 50cm反赤 | スケッチ1枚 |
| Dauvergne, Jean-Luc | (フランス) | 30cm反赤 | 画像1 |
| Fattinnanzi, Cristian | (イタリア) | 36cm反赤 | 画像1 |
| Foster, Clyde | (ナミビア) | 35cmSC赤 | 画像20 |
| Go, Christopher | (フィリピン) | 35cmSC赤 | 画像4 |
| Olivetti, Tiziano | (タイ) | 50cm反赤 | 画像5 |
B環のスポークは、今月も観測されている。 1日の熊森氏の動画では、30分の間にスポークが環の公転によって移動していく様子が鮮明に見られるし、30日のOlivetti氏の画像でもスポークが捉えられている。 他にもいくつかの画像で、B環上にスポークと思われる東西で非対称な陰影が認められる。
環の傾きは5°に開いて極大近くになった。 一方、太陽に対する傾きは3°まで減少したため、どの画像を見ても本体と比べて環がかなり暗くなっている。 太陽に対する傾きは今後も現象の一途をたどるため、明るさの違いは際立っていくだろう。
(11月5日 堀川)
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| 図1 相次ぐ白斑同士の合体 |
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| ▲で示した白斑のうち右がWSEで、左が新しい白斑A。図の右側は合体の経過で、白斑AがWSEに時計回りに巻き付いていく様子がわかる。 |
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